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VA/VE (加工技術FAQ)

材料選定

チタン合金とは何ですか?その主な特徴は何ですか?

チタン合金は、チタンを主成分とし、他の金属元素を添加して製造される金属材料です。純粋なチタン自体が持つ軽量性、高強度、優れた耐食性といった長所をさらに向上させたり、あるいは加工の難しさといった短所を補完したりする目的で開発、利用されています 。例えば、アルミニウム、バナジウム、クロム、モリブデンなどの元素が添加されることで、その特性は大きく変化し、多様な用途への適用が可能となります 。

チタン合金の主要な利点としては、まずその軽量性と高強度が挙げられます。普通鋼やステンレス鋼と比較して約60%の軽さであり、銅の約半分程度の重量です。アルミニウムよりは重いものの、その高い耐久性と軽量性の組み合わせは、部品の軽量化が求められる航空機などの分野で特に重宝されます 。特に、α+β型合金の場合、比強度(強度を比重で割った値)は400~500℃の温度域まで実用金属の中で最も高い水準を維持します 。

次に、優れた耐食性があります。チタン合金は非常に錆びにくく、化学プラントや海水淡水化設備のような過酷な腐食環境においても高い耐久性を示します 。この特性は、長期的な信頼性が求められる用途において極めて重要です。また、人体に対する生体適合性も特筆すべき特徴です。無害であり、金属アレルギーを引き起こしにくい性質を持つため、人工骨やその他の医療用部品として広範に利用されています 。さらに、チタンは他の素材に比べて柔軟性に富み、鉄の約2倍曲がりやすい特性を持ち、わずかな曲がりであれば元の形状に戻る性質も有しています 。熱伝導率が小さいことも特徴の一つで、チタン製のコップが温かい飲み物を入れても熱さを感じにくいといった形で、生体適合性の高さにも寄与すると考えられています 。

一方で、チタン合金にはいくつかの課題も存在します。まず、コストが高い点が挙げられます 。これは、原材料の希少性や製造プロセスの複雑さに起因します。さらに、加工が難しい「難削材」であるという特徴があります。これは、チタン合金の高い強度に加え、熱伝導率の低さ(加工時に熱がこもりやすい)、化学的活性の高さ(工具への焼き付きを起こしやすい)、そしてヤング率の低さ(加工時にたわみやすい、スプリングバックを起こしやすい)といった複合的な特性によるものです 。

チタンが持つ熱伝導率の低さや高い化学的活性といった特性は、最終製品としての生体適合性や耐食性といった望ましい機能に直接結びついています。しかし、これらの特性は同時に、加工工程において極めて大きな課題を引き起こします。例えば、熱伝導率が低いことで、切削加工中に発生した熱が材料内部に拡散せず、工具と切りくずの接触面に集中し、工具の急速な摩耗を招きます 。また、高い化学的活性は、工具の刃先に切りくずが溶着しやすく、工具の欠けや摩耗を加速させる原因となります 。このような材料固有の性質が、加工の難易度を根本的に決定しているため、チタン部品の製造には、原材料費だけでなく、特殊な工具、機械、そして高度な加工技術への多大な投資が必要となり、結果として全体のコストを押し上げる要因となっています。加工の困難さは単なる不便さではなく、チタンの製造エコシステム全体を規定する本質的な側面であると言えます。

 

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