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材料選定
チタン合金の主な機械的性質はどのくらいですか?
チタン合金の機械的性質は、純チタンのグレードや合金の種類によって大きく異なります。これは、それぞれの合金が特定の用途に合わせて設計されていることを反映しています。以下に、主要なチタン合金の代表的な機械的性質を示します。
主要チタン合金の機械的性質比較表
種類/グレード | 比強度 (計算値) | 0.2%耐力 (規格値) (MPa) | 引張強さ (規格値) (MPa) | 伸び (規格値) (%) | ビッカース硬さ (代表値) (HV) |
工業用純チタン (CP2種) | 75~113 | 215≦ | 340~510 | 23≦ | 160 |
βチタン合金 (Ti-15-3-3-3) | 157~199 | 690~835 | – | 12≦ | 270 |
64チタン合金 (ASTM B348 Gr5) | – | 828 , 827 | 895 , 896 | 10 , 10≦ | – |
注: 表中のデータは代表値であり、熱処理条件や製造ロットによって変動する可能性があります。
各性質の解説:
- 比強度: 材料の強度を比重で割った値で、軽量高強度材料の性能を示す重要な指標です。α+β型合金は、400~500℃までの温度域で実用金属の中で最も高い比強度を誇ります 。表から、βチタン合金が工業用純チタンに比べて格段に高い比強度を持つことが分かります 。
- 0.2%耐力: 材料が塑性変形を開始する応力値を示します。この値が高いほど、材料はより大きな荷重に耐えることができます。64チタン合金やβチタン合金は、工業用純チタンと比較して非常に高い耐力を持つことが示されています 。
- 引張強さ: 材料が破断するまでに耐えられる最大の応力値を示します。耐力と同様に、材料の強度を示す重要な指標です。
- 伸び: 材料が破断するまでにどれだけ塑性変形できるかを示す延性の指標です。伸びが大きいほど、材料はより柔軟で加工しやすい傾向にあります。一般的に、強度が高い合金ほど伸びは小さくなる傾向が見られます 。
- ビッカース硬さ: 材料の表面硬さを示す指標です。
上記のデータは、異なるチタンの種類間で強度(耐力、引張強さ)と延性(伸び)の間に一般的な逆相関関係があることを明確に示しています 。例えば、工業用純チタン(JIS Class 1/2)は強度が低いものの伸びが大きく、これは優れた成形性を示唆しています。対照的に、64チタン合金(Gr5)のような高強度合金は、著しく高い強度を持つ一方で、伸びは低くなります。これは材料科学における基本的な原則です。
このトレードオフは、各チタンタイプの適用範囲を直接的に決定します。延性が高い材料は、深絞りや複雑な曲げ加工など、大きな変形が要求されるプロセスに適しています。一方、強度が高い材料は、最小限の変形が許容される高負荷下の構造部品に選択されます。このことは、「より強い」材料が常に「より良い」わけではないことを意味しており、最適な材料は、製造プロセスと最終使用性能の両方で要求される特性の特定のバランスに依存します。