VA/VE (加工技術FAQ)
FC300という材質の化学成分と特性について教えてください。
材料解説 / FC300
FC300(ねずみ鋳鉄)とは
優れた振動減衰能・熱伝導率・被削性を持つ工業材料。
各成分と黒鉛組織の働きをご紹介します。
各成分と黒鉛組織の働きをご紹介します。
化学成分
C
炭素
2.90〜3.45%
2.903.45
黒鉛形成の主役。多すぎると黒鉛粗大化、少なすぎると白銑化のリスク。
Si
ケイ素
2.10〜2.90%
2.102.90
黒鉛化促進元素。炭化鉄(セメンタイト)の形成を抑制。
Mn
マンガン
0.45〜0.70%
0.450.70
硫黄と結合しMnSを形成し、悪影響を中和。基地組織を強化。
P
リン
≤ 0.30%
00.30
ステダイトを形成し耐摩耗性向上も、脆性を増す不純物。
S
硫黄
≤ 0.10%
00.10
不純物。遊離硫黄は黒鉛化を妨げ、鋳造欠陥の原因に。
黒鉛組織と特性
板状黒鉛のマトリックス分布
FC300の組織的ユニークさ
FC300に含まれる黒鉛は、マトリックスを分断するように板状に分布しています。一見すると欠陥のように思えますが、この構造こそがねずみ鋳鉄のユニークな特性の源泉とされています。
炭素とケイ素の含有量を厳密に制御し、炭素当量を低めに設定することで黒鉛の粗大化を防いでいます。
炭素当量(CE)= C% + Si%/3。FC300はこの値を厳格に管理することで均一な黒鉛分布を実現します。
振動減衰能
工作機械ベッドに採用される理由
黒鉛が振動エネルギーを吸収し、熱に変換します。これにより、鋼材溶接構造と比較して格段に優れた振動減衰特性を発揮し、工作機械のベッド等の振動を抑制します。
FC300
◎ 高
鋼材(SS400)
△ 低
アルミ合金
○ 中
工作機械のベッド・フレームにFC300が採用される最大の理由がこの特性です。振動が精度誤差に直結するため、減衰能の高さは加工精度に直結します。
工作機械ベッド
エンジンブロック
プレス機フレーム
エンジンブロック
プレス機フレーム
熱伝導率
局所加熱を防ぐ「逃げ道」
黒鉛は鉄よりも熱を伝えやすいため、片状に連続した黒鉛組織が熱の「逃げ道」として機能します。これはエンジン部品やブレーキディスクにおける局所加熱の防止に極めて有効です。
FC300
◎ 高
ねずみ鋳鉄平均
○ 中
球状黒鉛鋳鉄
△ 低め
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は強度が高い一方、熱伝導率はFC300より低くなります。用途に応じた使い分けが重要です。
ブレーキディスク
シリンダーヘッド
熱交換部品
シリンダーヘッド
熱交換部品
自己潤滑性と被削性
加工コストを下げる重要特性
切削時において、黒鉛が固体潤滑剤として働き、工具とワークの摩擦を低減します。また、黒鉛が応力集中源となるため、切り屑が容易に分断され、優れた被削性をもたらします。
被削性
◎ 優秀
工具寿命
◎ 長い
切り屑処理
◎ 容易
VA/VEの観点から、FC300への材料変更は加工工数・工具費の削減に直結します。難削材からの切り替えでコスト20〜30%削減の実績もあります。
機械部品
治具・フレーム
バルブボディ
治具・フレーム
バルブボディ




