2026.03.09
材料解説 / AC4B-T6
AC4Bに施すT6処理による機械的性質や物理的性質の変化は以下になります。
T6処理を施す前(F材)と後(T6材)では、その機械的性質に劇的な差が生じます。以下の表は、金型鋳造品における代表的な数値比較です。
機械的性質 数値比較表
| 特性 | AC4B-F(放冷) | AC4B-T6(熱処理) | 特性の変化と意義 |
|---|---|---|---|
| 引張強さ(MPa) | 270 | 345 | 約28%の向上。高負荷がかかる構造体への適用が可能に |
| 耐力(MPa) | 180 | 205 | 弾性限界の向上により、ボルト締結力などが安定 |
| 伸び(%) | 2.2 | 1.6 | 硬化の代償として延性は低下。脆性的な破壊に注意が必要 |
| 硬さ(HB) | 84 | 106 | 被削性と耐摩耗性が飛躍的に向上。精密加工に適する |
F材→T6材 変化のイメージ
引張強さ(MPa)
F材
270
T6材
345
硬さ(HB)
F材
84
T6材
106
106 HBという硬度の意義
被削性・仕上げ面精度への効果
106 HBという硬度は、アルミニウム合金としては比較的高い部類となり、旋削やミーリングにおいて工具刃先にアルミが溶着するのを防ぎ、良好な仕上げ面(面粗度)を得るために極めて有利な条件となります。
工具溶着防止
良好な面粗度
精密加工に適する
良好な面粗度
精密加工に適する
伸び(%)はF材2.2に対しT6材1.6と低下します。硬化の代償として延性が低下するため、衝撃荷重が繰り返しかかる用途では脆性的な破壊に注意が必要です。
2026.03.09
材料解説 / AC4B-T6
AC4B-T6のT6熱処理とは
AC4B-T6はAC4Bのアルミニウム合金鋳物にT6熱処理(溶体化処理+人工時効処理)が施された材質になります。
T6熱処理の3工程
①溶体化処理
②焼入れ
③人工時効処理
②焼入れ
③人工時効処理
溶体化処理(Solution Treatment)
合金を500°C前後の高温で数時間保持
合金を500°C前後の高温で数時間保持させます。この目的は、鋳造時に不均一に晶出したAl₂CuやMg₂Siなどの化合物を、アルミニウムのマトリックス中に均一に溶け込ませること(固溶)にあります。また、この段階で、鋳造組織内の鋭利なシリコン粒子が熱力学的な駆動力により丸みを帯びる「球状化」が起こり、材料の靭性が向上します。
500°C前後・数時間保持
Si粒子の球状化
Al₂Cu・Mg₂Si固溶
Si粒子の球状化
Al₂Cu・Mg₂Si固溶
焼入れ(Quenching)
高温状態から水や温水中に急冷
高温の状態から水や温水中に急冷する。これにより、本来であれば温度低下に伴って析出するはずの成分をマトリックス中に強制的に閉じ込めた「過飽和固溶体」の状態を常温で作る。冷却速度が遅いと、不適切な箇所に粗大な析出物が生じ、後の時効硬化が不十分になるため、迅速な冷却が求められる。
冷却速度が遅いと不適切な箇所に粗大な析出物が生じ、後の時効硬化が不十分になります。迅速な冷却が品質を左右する重要なポイントです。
人工時効処理(Artificial Aging)
150°C〜200°C程度で一定時間加熱
過飽和固溶体状態の材料を150°C〜200°C程度の温度で一定時間加熱します。この低温加熱により、マトリックス中に閉じ込められていた銅やマグネシウムが、ナノオーダーの極めて微細な析出物として均一に分散して現れます。この微細析出物が「析出強化」の主役となり、硬さと強度を最大化させます。
150〜200°C・一定時間
ナノオーダーの析出物
析出強化で硬さ・強度最大化
ナノオーダーの析出物
析出強化で硬さ・強度最大化
2025.05.14
鋳物の場合は、炭素鋼と同じように黒染め処理を施すと、本来の想定とは違う赤茶色に染まってしまうことがあります。
他にも、ワイヤーカットで微細なクラックが発生している製品も茶色く染まってしまいがちであったり、
クロム等を含む合金鋼はグレーに染まってしまいます。
鋳物の黒染めをする場合には、鋳物が黒く染まりやすい専用の薬剤などで対応が可能な表面処理業者を探しましょう。
また、黒染めの代わりに鋳物への付着性や防錆性能の高いパーカー処理(リン酸塩被膜の形成)代替することもおすすめです。
ワイヤーカット後の製品の場合は、カット面を研磨してから黒染め処理を行うと、染まりがよくなることもあります。
中村製作所では、黒染めを含む鋳物製品の加工にも対応しております。
お気軽にお問合せ下さい。




